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音声素材を扱っている時に、小さく「サー」とが「ブーン」などのノイズが入ってしまうことがあります。
例えばマイクからレコーダーまでのどこかの段階で入ってしまうホワイトノイズや、冷蔵庫、エアコン、照明器具などから拾ってしまう低周波ノイズなど様々です。
もちろん、撮影(録音)の段階でしっかりとレベルも調整されて、ノイズも入っていないのがベストなのですが、屋外での録音や機材のチョイスによってはどうしても避けられない場合もあります。
そんな中、録ってしまった後の処理として、少しでも聞きやすくするためのちょっとしたコツをお伝えします。
Premier Proをお使いの方であればAuditionを使用したり、iZotopeのRXシリーズなどでも同じようなことが出来るかと思いますが、今回は無料ソフトのAudacityを用いての処理方法を紹介したいと思います。
Audacity公式サイト(英語)
https://www.audacityteam.org/home/
AudacityとはWindowsやMacをはじめ、GNU/Linuxなどの様々なプラットフォームに対応したオープンソースの高性能音声編集ソフトです。
Windows 98など、古いOSでも旧バージョンが落とせるような、そんな歴史のあるソフトです。
インストール方法や日本語化、MP3機能の追加等については多くのブログや記事があると思いますのでお調べ頂くとして、今回は動画制作時にちょっと作業するだけで音声がグッと前に出てくるようになる4つの処理をお伝えします。
オーディオ素材の書き出し
既に編集ソフト・NLEで出来上がっているマスターからBGMなどの不要なものをミュートしたものをひとつのオーディオファイルとして書き出すのが一番手っ取り早いと思います。
そのファイルをAudacityで読み込んで、編集したい場面ごとに区切って作業していくやり方がひとつ。
その他には、例えばセリフや効果音が複数重なっていたり、個別のオーディオファイルとしてシビアに調整したいような場合には個別で書き出した方がもちろんクオリティは上がります。
ここはプロジェクトや掛けられる時間によって使い分けてみて下さい。
オーディオの取り込み
Audacityを起動したらドラッグするなりファイルメニューから「開く」、「Command(Ctrl) + O」などでも取り込めます。
元素材は動画ファイルでもオーディオファイルでもOKです。
波形が表示されたらOKです。読み込めない場合にはWAVやAIFFなどのオーディオファイルに書き出してから取り込んで下さい。
1. ノイズ処理
まずは聞かせたいところを聞かせるために、聞かせたくないところを聞こえなくしましょう。
1. 周波数が特定できるような低周波、高周波がある場合には、Notch Filterを使ってそれを除去します。
特定したい範囲を左右にドラッグして範囲を指定したら、「解析」メニューから「スペクトラム表示」を選択して下さい。
下記のように波形に突出しているものがある場合にはこの段階でノイズを取り除いておくと後の処理が楽になります。
マウスオーバーすると、画面下部の「PEAK」の部分にそのノイズがどの周波数なのか表示されますので、今回はこの10859 Hzのノイズをノッチフィルターで除去してみます。
スペクトラム表示の画面を閉じたら、「エフェクト」メニューの中からNotch Filterを選択して下さい。(ここではMac版のVer 2.1.3を使用しています。)
出てくるウィンドウの「Frequency」の部分に先ほどの周波数である「10859」と入力します。
次に出てくる「Q」とはQ幅とも呼ばれますがカーブの幅です。数値が小さいほど狭い帯域を処理するようになります。
※余談ですがQ=1.44が1オクターブ幅で、半分の0.67の時は2オクターブ分の幅に作用することとなります。
試しにQを1と5と10の3パターンで比較してみました。
Qの数値が小さい方が周囲に与える影響が大きいのがわかりますか?
波形が変われば変わるほど元の音とは変わってきます。声の質なども変わってきますので、耳で聞きながら程良いところを見つけて下さい。(ノートPCの小さいスピーカーではなく、大きいスピーカーやヘッドホンを推奨します。)
まずはQ値を大きめの数字ではじめてみて、少しづつ数値を下げながら様子を見ていくのが良いかもしれません。
この段階で完全に除去出来るケースも少ないと思うので、ある程度小さくなったなと思ったら次のステップへ進みましょう。
※ちなみに上記の音声は4K辺りにも大きいノイズが入っているので、必要であればそれぞれに対して同様の作業を繰り返します。
2. 次は「サーッ」とか「ザーッ」と言った感じのホワイトノイズのトリートメントです。
ここにまた別の音声ファイルを用意しました。
セリフの合間など、ノイズのみが録音されている部分を左右にドラッグして範囲指定します。
音源からノイズの成分を抽出し、その成分を取り除くためのサンプルが必要なためですね。
ノイズを拾う部分が選択できたら、「エフェクト」メニューから「ノイズ除去」を選択します。
次に、「ノイズプロファイルの取得」を選んで下さい。
ノイズのプロファイリングが終了すると自動的に画面が閉じます。
次に、タイムラインで「ノイズ除去を行いたい部分」を選択してください。
ファイル全般に処理を行いたいようであればCommand(Ctrl)+ Aなど。部分的な除去であれば範囲をドラッグ。
範囲を選択したら再度「エフェクト」メニューの「ノイズ除去」を選択します。
3つのパラメーターを調整し、プレビューで実際に聞いてみて問題がなければOKを。気に入らないようであれば数値を追い込んでいきます。
細かい部分は他のブログなりの方が詳しく記載していると思いますが、
- ノイズの除去:ノイズをどれくらい小さくしたいのか
- 感度:ノイズが他の成分と区別し難ければ高めに(街中や雑踏など、複雑な場合は高めに設定)
- 周波数平均化:よくわかりません、、、
- ノイズ:現象=減少の翻訳ミスらしいです。通常はこちらを。ノイズ成分を減少させます。一方の残存ではノイズのみを残すようです。
トライ&エラーで試してみて下さい。
今回はそのままの数値で処理を行った結果、このようになりました。
2. 無音部分の削除
数秒以上無音状態が続くような場合には、その部分を無音にするか削除して下さい。
NLE上での処理でも良いのですが、Audacityでの処理方法はこのようになります。
単純に、ミュートしたい範囲を選択してDeleteキーでも良いですし、ミュートの場合は
「範囲選択」→「Z(ゼロポイントを選択)」→「無音化ボタン(Command + L)」です。
途中に「Z」を挟むのは選択範囲の両端の部分で波形がゼロポイントを通過する部分(無音部分)を選択してくれるためです。
パッと見は波形の幅がないような部分でも、カットすると「プツッ」といったノイズが発生してしまうのを防ぎます。
心配であれば更にフェードアウト&フェードインも加えてください。
3. コンプレッサー処理
コンプレッサーとは音を平均化するエフェクトです。
小さい部分を持ち上げたり、出過ぎた部分を抑えてくれたりします。
台詞や演者による音量のばらつきを整えてくれるので聞きやすくなります。
「エフェクト」メニューからコンプレッサーを選択して、パラメーターをいじるのですが、コンプは奥が深いので、詳細は割愛します。興味がある方はいろいろ調べてみて下さい!
4. ノーマライズ処理
そして最後にファイルのレベルの平均化です。
ファイル全体の音量を大きすぎず小さすぎずな適正なレベルに揃えてくれるので、NLE上でのに戻した後も扱いやすいです。
「エフェクト」メニューから、日本語訳に違和感を覚えつつも「正規化」を選びます。
DCオフセットを削除にチェックが入っているのを確認したら、基本的にはそのまま「OK」で良いと思います。
あとは「ファイルメニュー」から「オーディオの書き出し」を選択し、出来上がったファイルをNLE上でのに戻してあげて下さい。
あとがき
完成した音源をNLEに戻してあげた後は、元ファイルの音声はミュート(無効化)するのをお忘れなく。BGMなども無効化したようであれば戻してあげて下さい。
もちろん、細かいボリュームやパンなどの設定は残っていますので、あくまで素材のポリッシュ作業として今回の記事がお役に立てたなら幸いです。
それではまた。
HH
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